
「ニノン・ニナン」とは何か。
フィリピン人と話をする中で聞いたことがあるかもしれません。
一言で説明すると、
「子供がキリスト教の洗礼を受ける際に親となる人」のことをいいます。
「第2の親」「洗礼親」とも言われます。
親になるのが男性の場合はニノン、女性の場合はニナンです。
英語ではgodfather、godmotherと呼ばれます。まとめてgodparentともいいます。
親になるのが「ニノン、ニナン」。
ではニノン、ニナンに見守られる子供は何と言うのか?
タガログ語でそれをinaanak(イナアナック)といいます。
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キリスト教の「洗礼式」での名付け親
フィリピンは人口の8割以上がローマカトリック教会を信仰しています。
カトリック教会では、生まれた子供は《洗礼》という儀式を受けます。
その際に子供が正しく成長するよう見守る「第二の父」「第二の母」をつける伝統があります。
それがニノン、ニナンです。
ニノン、ニナンになってもらうことと、洗礼を受けることは一体です。
フィリピンのカトリックの人々にとって、人生の中で最も大事なことのひとつとされます。
洗礼というのは宗教的には仏教が多い日本ではあまり聞かないものですが、
辞書には次のように定義されています。
<<キリスト教における儀式で、額に水を振りかける、または水に浸す。
浄化や再生の象徴とされ、キリスト教会に入ること。
多くの宗派において、年齢の若い子供に対して実行され、洗礼名をつけることと同時に行われる>>
ただし、ニノン、ニナンになることは必ずしもカトリックを信仰していなければならないことを意味しません。
他宗教を信仰していても無宗教でも、ニノン、ニナンにはなることは問題ないとされています。
そのあたり割と柔軟、ということですね。
目的は「子供の成長を見守る」こと
子供にニノン、ニナンをつける目的は、
その子供が正しく成長するよう見守り、導くためと説明されています。
子供が善い心を持ち、善い行いをする人間に成長し、
神を信じて生きるよう助けていくことが本来のニノン、ニナンの役目です。
ニノン、ニナンになったとしても何か法的な義務を負うことはありません。
ですが、実はニノン・ニナンの役目として期待されることがあります。
それはクリスマスにイナアナックに対してプレゼントやお金をあげることです。
ニノン、ニナンの「義務」ではありませんが、
一般にフィリピン人は家族同士、さらにイナアナックにもプレゼントを買うため、
クリスマスシーズンには給料が手元に残らなくなります。
誰をニノン、ニナンに選ぶのか?
誰をニノン、ニナンに選ぶでしょうか?
ニノン、ニナンを決めるのは子供の親です。
たいてい自分の友人に、なってもらうことを頼むのがならわしです。
有名人や政治家との擬似家族的なコネクションをつくる目的から、
ニノン、ニナンになってもらう人もいるようです。
1人の子供につけるニノン、ニナンの人数も決まっていません。
ニノン・ニナンの依頼を断るのはNG
ニノン、ニナンになってほしいと頼まれた場合に、
「No」ということはとても失礼なことだと考えられています。
頼まれたら、引き受けるものというのが礼儀だとされています。
洗礼式当日、予定があわず出席できない場合には、
誰か代理の人に頼んでプレゼントなどを持っていって参加してもらえばOKです。
洗礼はどのように行われるのか?
洗礼は子供が生まれたら行いますが、
すぐに行う場合もあれば、1歳の誕生日に行う場合もあり、決まりはありません。
その子供の親にとって一番よい時を選んで行えば良いとされています。
子供の親、家族、ニノン、ニナンとなる人は洗礼式の当日、皆、教会へ行きます。
そこで、神父が子供の額に水を振りかけたり、
「聖体」と呼ばれる儀式用のパン(Sacramental bread)を食べさせるなどの儀式をします。
神父の「さあ皆さんどうぞ」というかけ声で、
集まったニノン、ニナン全員で子供の腕などいろいろな場所に手を置きます。
そして、生涯にわたり、その子供のニノン、ニナンとして見守るという誓いをします。
これで洗礼式は終了です。
実は私自身やってみたことはないのですが、
調べたところ大体こんな感じだそうです。
おわりに
フィリピン人と親しくなると、ニノン、ニナンになってほしいと頼まれることもあるかと思います。
フィリピン人にとって、子どもに洗礼親をつけることはとても大切なことなのです。
もしニノン、ニナンになるよう友だちから頼まれたら、どうするか?
友だちの顔をつぶすのではなく引き受けるのが良いと思います。
わからないことがあれば、遠慮なく聞いてみてください。
そしてクリスマスにイナアナックにお金やプレゼントを配るのを忘れずに!